秦氏の謎2 秦氏とユダヤ人(8)接触の可能性Ⅲ 海上ルート①
古代ユダヤ人が秦氏(の前身集団)と接触した可能性において、「海上ルート」が最も可能性が高いとワタシが考える理由は何か。
まず何よりも秦氏の前身集団が、優れた航海民であり海洋交易民であったこと。
オリエント世界から東アジアへ移動するには、ルートさえ確立されていれば海路の方が陸路より安全で速い移動が可能であったこと。
海路での移動すなわち航海においては、太平洋や大西洋のような大海原を横断するのならともかく、陸から付かず離れずの「沿岸航海」が可能なインド洋の航海は、当時の陸路での移動よりはよほど安全で速かったと考えられます。
さらに船による移動は、大量の人員、貨物の運搬が可能なこと。
以上おおまかに三つの理由でワタシは、古代においては海上ルートにおける接触の可能性が最も高かったと考えます。
今回はまず秦氏の側、つまり東アジア側からのアプローチの可能性を見てみましょう。
秦氏の前身である交易集団は長江文明において、はるか西域の崑崙山脈で採れる「玉」の交易を担っていたが、同時に優れた航海民であった彼らは「東アジア地中海」を主な活動の場とする「海洋交易民」でもあった、と以前に述べました。
約4200~4000年前、大寒冷期のあおりを受けて長江文明は崩壊します。
長江文明の民・越人の多くはこの時、大量のボートピープルとなって長江河口域から、主に南方に向かって逃れていったと考えられます。
ちょうどその時期あたりから南シナ海やフィリピンの太平洋岸、さらにニューギニアの北の海域の辺り(要するに東南アジア島嶼部海域)に「海のモンゴロイド」、オーストロネシア語族の祖先の集団が色濃く現れるようになります。
この「海のモンゴロイド」=オーストロネシア語族の祖先の集団は、じつはもともとその北の方、台湾や中国江南地方にいた民族集団であったことが、言語学的に推測されています。
この集団の分布範囲は、さらには日本列島(!)にも広がっていました。
4000年前よりも以前に、台湾や江南地方にいた海洋民とは、つまり越人です。長江文明の民です。
同じく日本列島にいたのは縄文人。ワタシ流に言わせてもらえば、航海民越人が日本列島にいわば植民して根付き、縄文人となった人々、ということになります。
彼らが、大寒冷期のあおりを受けて東南アジア島嶼部海域にまで進出した、ということです。
この時期、日本列島は縄文後期に入っていましたが、この縄文後期というのは人口が大幅に減少した時期でもあります。
ひょっとしたら縄文人のなかでも、大陸の越人と連携して南洋へと逃れた集団がいたのかもしれません。
それはともかく「海のモンゴロイド」の一部は、さらにその後メラネシア、ミクロネシアへと進出。
そして”遅くとも”3600年前、ニューギニアあたりの近海に”突然”現れたのが、のちのポリネシア人の祖先となる「ラピタ人」です。
彼らはさらに長い時間をかけてポリネシア各地へと分散し、最終的にハワイ諸島にまで到達します。
また東南アジア島嶼部海域の「海のモンゴロイド」の一部は、やはり長い時間をかけて、紀元前1500年~紀元前500年の間にマラッカ海峡(マレー半島とスマトラ島の間)やスンダ海峡(スマトラ島とジャワ島の間)などを越えてインド洋に進出。
最終的にはマダガスカルに到達し、そこの原住民族となります。
秦氏の前身である交易集団も長江文明崩壊後、勝手知ったる海へ逃れたと思われますが、そこは交易集団。
「東アジア地中海」を中心に、その南方およびに北方の海、さらには中国大陸内陸部まで広がる交易ネットワークを徐々に築いていったであろうことは以前に述べた通りです。
さて彼らの同胞は紀元前1500年~紀元前500年の間にマラッカ・スンダ海峡などを越えてインド洋にまで達していました。
このとき、交易集団だった秦氏の前身集団もかつての同胞たちと同じようにそのあたりにまで活動範囲を拡げていたことは、十分に予測されます。
インド洋にまで行ったかどうかはまた別ですが、交易民としての性格を考えれば、彼らがマラッカ海峡やスンダ海峡のあたりまで手をひろげていてもおかしくはないと考えられます。
秦氏の前身集団は、交易民としてインド洋への入り口であるマラッカ海峡やスンダ海峡のあたりまで活動範囲として拡げていた可能性がある。
今回はこのことをアタマに留めつつ、次回、ユダヤ側からの海路におけるアプローチの可能性について探ってみましょう。
参考文献:
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