古代史は小説より奇なり

林業家kagenogoriが古代の謎を探求する

桃太郎の鬼の正体は?(1)

 またしてもブラタモリからのネタ(笑)。

 昨日11月30日のブラタモリの舞台は岡山

日本, 戦国, 城, 旧市街, 岡山, スカイ

 ワタシの尊敬する磯田道史先生(ワタシより5歳も年下なんですが.笑)をゲストに迎えて、桃太郎と鬼の正体に迫るというものでした。

 

 番組の結論(的なもの)は、は当時(弥生末期~古墳初期?)の吉備地方を支配していた(おそらく)クニの首長で、朝廷に従わなかったために桃太郎、すなわち大和朝廷から派遣された天皇の子息:吉備津彦に征伐されたのだろうと、まあおおよそこんな話だったと思います。

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 番組内では具体名は出てこなかったように思いますが、鬼の名前は「温羅(ウラ)」と言います。

 番組では鬼(=温羅)が立てこもった「鬼が島」のモデルと考えられてきた山城「鬼ノ城きのじょう)」も紹介されていました。

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 この温羅、といいますか温羅の一族が実は、ワタシの大好きな(笑)秦氏に大いに関係しているのではないか、というのが今回のオハナシです。

 

 番組内では吉備津彦を祀る吉備津神社の古文書に書かれている吉備津彦と鬼のハナシを、磯田先生が読み解いていました。

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 そこで書かれる鬼の特徴として、

頭に角のようなものがある

「(鬼は)火を口から吐き、近隣の山々を焼く

というものがありました。

 

 「角」はともかくとして(後述)、「口から火を吐いて山々を焼く」という伝承については、古代に詳しい方ならピンとくるものがあるかもしれません。

 ワタシはこれは間違いなく、「製鉄民」のことを悪玉に仕立て上げる場合に使われる表現だと思います。

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 製鉄、当時は「たたら製鉄」だと思われますが、それにはとにかく大量の「」と高温が必要です。

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 鉄の精錬に十分な高温を得るためには「たたら」と呼ばれる「鞴(ふいご)」で新鮮な空気を常に送り込み、どんどん熱を上げていく必要があります。

 ふいご」で吹かれるたびに、炉から吐き出される火の粉

 まさに「口から火を吐く」ように見えます。

 実際、当時の人は(たたら製鉄の様子について)そのような表現をしていたのかも知れません。

 

 そして「焼かれる山々」。

 当然ですが鉄の精錬(製鉄)には、大量の木炭、そしてその原料となる大量の木が必要です。

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 その地で恒常的に製鉄が行われていたとすれば、周辺の山々の森の木々は焼かれるために伐採され、次第にハゲ山になっていったと思われます。

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 それが「近隣の山々を焼く」という表現になったのかもしれません。

 また想像を膨らませれば、ハゲ山の麓で夜通し「たたら」による製鉄を行っていれば、まさに山が燃えるように赤く染まったことでしょう。

 それがこの表現につながったのかも知れません。

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 その地域(クニ)は生産されるで豊かになっていったと思われます。

 鉄製の農具や土木器具による「農業革命」により生産力も飛躍的に上がったことと思われます。

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 しかしその負の面も次第に明らかになっていったはずです。

 ハゲ山が広がればその麓や下流域の人々は、たびたび襲う水不足や土砂災害に悩まされることは容易に想像がつきます。

 また鉄で生産されるのは農具や土木器具のような「平和利用」されるモノだけではありません。

 クニの支配者が鉄の生産を握ったとき、必ず作られるのが「鉄製の武器」です。

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 少なくともヤマトの政権から見れば、非常に危険な存在に映ったことは間違いないでしょう。

 ヤマトは温羅の一族を「悪者」に仕立て上げて討伐し、その鉄の生産と豊かな農産を手に入れた、というのが吉備における「桃太郎の鬼退治」の真相だったと考えられます。

 

 ではこの吉備の製鉄民がどう秦氏と結びつくのか。それは次回で。